来日を果たした直後、ノッてるRUSHの傑作であります。
日本のメディアも今まで以上に取り上げていましたし、MTVが勃興した頃で未だにThe Big MoneyやMystic RhythmsのPVの残像が頭から消えたことはありません。
Powから(RUSHに)入ったというファンにとっては先制パンチでもあり思い出の1枚に違いないことでしょう。
前作のGUPと比較すると(ここ暫くGUP聴いてないのですが)、一気に明るくなった感じを受けます。陽調な曲が多いのも事実ですが、曲調というより格調と言った方がいいのかな。Signalsに寄稿している高崎晃氏が言うところの「RUSHの明るさ」が増強された作品だと思います。
シンセの使い方が前作よりも過激化かつ洗練されているわけですが、出音の増加に臆するどころか個々のプレイ自体は一層活発なものになっているところが凄いです。
GeddyのベースもAlexのギターも、そしてNeilのドラムもどれもこれも実験的でありシンセの導入にひけを取らない工夫が満載になっています。
ハードロックな風情(ギンギンに牽引するギターリフとか、ソリッドなユニゾンプレイなど)が若干薄れているものの、その強力な編曲によってロック然としたスタイルは色褪せていないところがこのPowの成功であり展開(ある意味プログレ化)であったように感じました。好みの話は置いておきます^^。
Power Windowsという言葉については以前触れましたが、やはり諸々の「力」の通り道(発露の仕方、使われ方)を描いた内容でまとめられていたと感じています。
言葉遊びとして各曲のテーマを無理矢理「力(power)」という文字を持つ日本語に当てはめてみると・・・
The Big Moneyは経済力(かっこ良過ぎますね、しかし、いい言葉がない)
Grand Designsは表現力とか創作力
Marathonは持久力とか持続力とか
Manhattan Projectは軍事力
Territoriesは国力(威力かな)
Middletown Dreamsは意力(精神力とか志の強さという意味です)
Emotion Detectorは許容力。
Mystic Rhythmsは・・・難しいですね。影響力かな・・・
ま、遊びは遊びとして・・・アルバムタイトルが先にあったとは考え難いですから、出来上がった楽曲を一揃い眺めてみて、各楽曲が持つ「力の形(あるいは方向)」を統合する名称として創出されたのではないか、そんな風に想像しています。そうだとして秀逸な命名だと思います「Power Windows」。
(結構、引鉄自体は車のコマーシャルだったりとかしている可能性は否定できません。「頂き活かす」観察力が凄いですからRUSHの皆さま・・・というかタイトルはいつもどうやって決めているのだろう・・・)
複数形の(s)が付くアルバム(私的には各曲が隠れ共有テーマを持った、或いは連関したコラージュ風作品だろうと推測しています)は、Pewから始まり「Grace Under Pressure」で途切れてこのPowで早くも復活。しかし、HYFから一転、影を潜め最新作「Vaportrails」まで使われませんでした。本作Powで何がしの結実があったのか、続く「Hold Your Fire」で新たなアルバム感に目覚めたのか、それは謎です。
最後にEmotion Detectorのお気に入りの一節を
It's true that love can change us
But never quite enough