2005年05月25日

The Spirit Of Radio(詩)

洗練されたRUSHの先制パンチな曲に込められたメッセージ。
それは、自らの展開を鼓舞するかのようでもあり、誠実さを失わない為の宣言でもあるわけです。


歌詞全文

曲の素晴らしさは別記事に譲るとして、この代表曲に込められた言葉を眺めてみます。
自訳と絡めながら、いってみます。

日常的な描写で始まります。朗らかな感じであります。
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親しげな声で一日が始まる
遠慮がちなDJが何とも捉えどころのない歌をかけ、
その魔力がかった音楽が君の朝の雰囲気を仕立てるのだ
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朝日差すベッドからモゾモゾと手を伸ばしラジオのスイッチを入れてる絵が浮かびました。
companion はまんまコンパニオンなのですが、ラジオのコンパニオンなのでDJかな、と。
elusive を「捉えどころない」としましたが、ニュアンスとしては平凡というか抑揚のないという感じだろうと思います。
・・・朝に聴く音楽でその日のノリが左右されるってことあります、実際。

(余談)
私のお出かけテーマソングは The Camera Eyeであります。
神話大全ビデオに毒され過ぎか・・・

第2バースが不思議な節で、全体が比喩であるようにも思えます。
Neil師匠の慣用表現の文章化アレンジもあり・・・
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Off on your way, hit the open road,
There is magic at your fingers
For the Spirit ever lingers,
Undemanding contact in your happy solitude.

軌道から外れ、あての無い旅に出る
そこにはすぐ手に入る不思議な魅力があるのだ
いつまでも消えることの無い生命の息吹が
妙味な孤独にある自然な触れ合いがそこにあるのだ
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冒頭は「日常」「普段」から離れという感じだろうと思います。
hit the road で「旅立つ」とか「去る」という成句なのですが、Neil師匠はそこに open という言葉を加えています。
open は文字通り「広い」ですが、「予約をしないで」とか「予定の無い」という意味で使われます。
・・・ですので、Neil師匠は唯、旅立つのではなくフラリと、あるいはエイ!っと出かけるという表現にしていると思います。

at one's fingers は at one's fingertip の運用で、
意味としては「お手の物」とか「手馴れている」とか上記のような意味です。

ふらりと訪れる旅先には魅力がいっぱいあるんだ、ということでしょう。
For 以下はmagic の中身を説明しているのだろうと思います。for なので「〜を求めて」でもいいかもしれません。

Neil師匠の旅の持ち味が綴られているようでもあります、が
この曲は音楽について詩が歌われているわけですから、旅の意義でありようはずもなく
音楽観の比喩であると感じます。

・・・それまでの自分たち流の創作方針(あるいは形)に囚われないで、
純粋に音楽に向き合うと、そこには色んなモノ(エッセンスやヒント、感覚)がある、
ということだろうと私は思っています。

サビはどうでしょうか
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見えない放送電波は躍動感に溢れ
輝くアンテナはエネルギーに満ちている
時間を感じさせない波長に感情が呼応する
価格を超えた贈り物を運んでくるのだ、無料同然に
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ここは肯定的な発言であるように感じます。爽快なロック魂とでも言いますか・・・
それをラジオが発信していると・・・
almost free ですが、詩的になりませんがSarie さんが訳された「見返り要らず」が秀逸だと思います。
・・・望んでいないという感じがそこにあると思います。


2番でも引き続きロック観が綴られています。
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機械仕掛けで作られる現代風音楽全てについて
今のところは寛大でいられる
それほどあっさりと編曲されたわけではない
全くあなたの誠実さの問題なのだ、そう
あなたの誠実さの
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「hand making」 で「手作り」という意味ですので、機器で作られる音楽のことでしょう。

ここサビ後に歌われていることが意義深いように思います。
サビのバックでRUSH初のシーケンスフレーズが出てくるのですが、それを引いた内容になっている気がするからです。
「machinery making modern music」 とは、正にThe Spirit Of Radio も含むデジタルアンサンブルな楽曲のことでしょう。
つまり、実際にデジタルアンサンブル表現しておいて、そのことについて歌っているのです。(「Hemispheres」からの変化を説明しているようでもあります・・・)

2行目の意味からすると肯定的であることが伺え、この変化に前向きであると宣言してるかのようです。
補足するかのように「not so coldly charted」と続きます。
「coldly」は「用意なしで」とか「即興で」という意味から「あっさりと」というslang的な使われ方もされます。
「chart」には「(ビルボードなどに)チャートインする」という意味と、音楽的(特にジャズ)には「編曲する」という意味があります。
簡単にチャートインしたわけではない、ともとれますが、売れてる音楽に肯定的なのではなく、手法としては現代風だが・・・
(最後の行で述べられていること、「作曲に対する真摯ぶり、誠実さの問題なのだ」ということからすると)安易に編曲されたわけではないという意味だと思います。

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誰もが音楽の自由の存在を信じたがるけれど
数々の賞や際限ない妥協が
高潔な幻想をかき乱すのだ
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皆、音楽の理想や自由なスタイルを持とうと意識しているが、一般的な賞賛や売れ筋への意識がそれを邪魔すると正直に述べています。
自分たちのことなのか、一般的なことなのかは別として、業界と市場がある以上雑音は避けられない、と。

レゲエ風な最後はどうでしょう・・・いや、原文で締めます。
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For the words of the profits were written on the studio wall,
Concert hall
And echoes with the sounds of salesmen.

・・・
読み下してみて、最後の歌詞が強烈が故に業界に否定的な歌なのかと思っていましたが、
というよりも、主題は音楽はスタイル固執ではない、僕らの音楽自体と僕ら自身を聴いてくれ、という元気な内容でした。
・・・勿論、抗うべき業界の影もチラホラしておりますが。

(余談)
レゲエという文字を打ってて、The Clashの或る曲を思い出しました(ロンドンコーリングの紙ジャケ買おうかな)。
曲名も何も思い出せないのですが、ジョー・ストラマーの歌い出しの詩がカッコよくて忘れられません。
パンクブームも去り、クラッシュが様々な音楽要素を取り込んでいった頃の歌だったと記憶してます。(元々、クラッシュは一パンクバンド以上の才能、才覚がありましたけど)
業界批判丸出しで始まる歌詞はこんな感じです
「パンクも、レゲエも駄目だってんなら、おい、ファンクはどうだ!え!?」

何となくThe Spirit Of Radio と通じているような気がしたもので・・・
言葉が違いすぎますが・・・
posted by snowdog at 14:16| Comment(2) | TrackBack(1) | Permanent Waves | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
TBありがとうございます。

RUSHの応援サイトですか。渋いですね。
これぞブログの王道って感じですごく好感が持てます。
時々覗かせていただきますね。また拙ブログにもお越しください。
Posted by キングあおぽん at 2005年05月26日 05:19
ご来訪ありがとうございます。
やり始めてハマッてしまいました・・・。

キングあおぽんさんのレビューされるアルバムにはよく聴いたのが多いので、こちらこそお邪魔させて頂きます。
Posted by snowdog at 2005年05月30日 15:21
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ラッシュ・ライヴ??新約・神話大全/ラッシュ
Excerpt: 個人的には、ここのベーシスト兼ボーカリストのゲディ・リーって、ファンなんですよ
Weblog: キングあおぽんのCD論
Tracked: 2005-05-26 05:14
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