The Trees のモチーフが25年も色褪せないで日本で広がっている気がして嬉しい感じです。
カナダ史を学ぼうという方にはこの本を推薦します。The Treesを読んだ後に補完的に購入したのですが、とてもいい本でした。
まず、サブコピーがかっこいい^^(そんな理由で買うなと・・・)。
カナダの歴史―大英帝国の忠誠な長女1713‐1982
しかしこの「大英帝国の忠誠な長女」というサブコピーにはカナダの歴史背景が凝縮されている秀逸なものであります。
私が潮で漁ったカナダ史の中身はほとんどこの本からまとめられものだろうと推察します。
巻末の付録の年表もありがたいです。
4500円とちょっと高めですが、新品がまだ手に入ることと、半端な本よりも一撃で学ぼうとするならこれだと思います。
古本の相場は2500円〜3000円位でしょうか、出物で2000円(地方古本屋サイトに行きましょう)。
図書館に行ってみるのもいいと思います。巻末の付録の年表もありがたいです。
前記事の中身で概略通史は問題ないと考えますが、この本の読後に気付いたことを少し記しておきます。
忠誠な長女という言葉が示すとおり、カナダは大英帝国に明確に抗うことなく独立への道程を進みます。
その過程で面白いのは、歴史が浅い分、伝統的な国内の確執というものがなく(勿論、地域的なものはあります、ケベック以上に東部地域やプリンスエドワード島において足並が揃うのは独立気運高まる時期の最後であります)、
首相というか為政者が変わるごとに方針がコロコロと変わること。伝統的な確執というのは、武士と貴族とか、教会と領主だとか過去から続く背景という意味です。
その中においてもアメリカのようにイギリスに反旗を翻すことがなかった。つまり、カナダ領土内の統一的発展的な突破口を反英には結び付けなかったということです。
なぜか
既にカナダが国際性という特色を持っていたことと、そして地理的な(地政学的といっていいのかは判らない)運があったと言えます。
前記事にも書きましたがカナダはアメリカ独立戦争に呼応しません。この時点でも既にカナダの性格が発展途上の植民地でありながら一国主義ではないことを意味しています。
フランスとイギリスという中世列強(しかも拮抗する世界史の二大勢力)両国の文化を包含し、原住民との交易も盛んで、
独立戦争後は親英派のアメリカ市民が、1800年末には英連邦以外からの移民が多く流入します。
この多文化政体カナダは内政安定と経済発展の為に英国との関係を上手く利用します。これも国際性の一部であることが面白い。
力(ちから)で100年も早く独立を果たしたアメリカとは全く異なる近代を歩んできたわけです。
地理的な意味も重要です。
インドやオーストラリアといったヨーロッパから遠い植民地ではなく英国からの目が届き易かった場所であること。
これは前述の「カナダが上手く利用した」にも通じますが、互いが牽制しやすく考えが見え易い立場であったということです。
つまり、カナダは英国が困っている時には困っていることを、そして連邦の結束(あるいは自体)が衰退していくことも感じられる距離にあったこと・・・
そして、走り抜けようとするアメリカ合衆国と隣接していたことも要因に上げられます。
併合の脅威だけが歴史には出てきがちですが、実際には第一次世界大戦以降の経済発展時において貿易相手国として、あるいは投資対象として決して少なくない米加の相互依存関係がそこにあったのです。
屈せず、戦わずに英連邦の長女として振る舞い続け、
そして最後には誰がどう見ても親離れするべき時がやってくるのです。
The Trees に持っていた最初の印象というのは、イギリス圧制からの独立みたいな稚拙なものでした。
しかし歴史に触れ、イギリスはカナダに対してある意味寛大であり、カナダはイギリスに依存していたことが見えてくると、
カナダの独自性を保ちつつ英連邦からの近代的でソフトな独立(戦闘を交えることなく)を果たしたことを称える歌のように思えてきました。
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