んー。はまりました、Hyperspace。難しく全体的に保留で追走確定なのですが・・・やはりアルバムを束ねて聴かないと見えてこないですね。
歌詞全文
このHyperspaceという言葉を何故に使っているかということについて考えてみました。オフィシャル訳では「超空間」となっているのですが、「超空間」とすると数学(幾何学)的な使い方という事になります。
ニュアンス的には物理学の「多次元」(物理学と数学は密接であり、多次元と超空間は同根で、日本語化された語感がどうのということではなく、この詩のモチーフとしては視覚的な直感というよりも、言葉の持っている示唆的な含意によるのではないかという気がします。)のように感じます。
日常の現象とは3次元空間における時間的変化。(座標を定める3次元による空間を時間によって4次元化すると現世も多次元ということになります。そして、そのことがこの詩のテーマの一翼であるように思います。多次元たる要素は時間に限らないのです。)
全ての原子の所在が判れば未来を予測できると言った人もあるようですが、実際には無数の関数が組み合わさっているのでスパコンが答をはじき出す頃には過去になっているという笑い話にしたいような考え方です。
時間が単一に存在するのだとしたら、上の考え方は理論上有りなのでしょうが、実際に生きていく存在の私としては「時間とは存在するもの個々が持つ能力」であり、先に時間が其処にあるわけではないと思いたい。
実はこの詩の中には、そんな風なことが綴られているように見えます。
(だいぶ、余談が先行しましたが・・・)
いきなり仕掛けがありまして
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A quantum leap forward
In time and in space
The universe learned to expand
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ここの quantumを単語として引っこ抜くと「量子」ということになりますが、実はquantum leap で一つの言葉です。
それでもって leap forward というのも成句です。leap は「飛び跳ねる」とか「さっと動く」という意味で leap forward で「すっと前に出る」とニュアンスの熟語です。
しかし、この leap を動詞とすると leaps になっていないとおかしくなります。
quantum leap はNeil師匠十八番の物理学用語でもあり日常の慣用表現でもあるダブルミーニングな言葉です。
物理学的には「原子を構成する素粒子の消失」であり、日常語としては「劇的な変化」や「急激な進歩」を表わします。
それを意識して訳すと・・・
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進歩的で劇的な変化
時間の中における、そして空間の中における
宇宙は膨張することを覚えたのだ
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ここだけ見ると唐突なのですが、続くバースがまた難しいのですが拙訳を先に記しますと・・・
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混乱させる力とそれを整然化させる力
勝ち誇ったようであり悲劇的でもある
主権を奪いとった機械世界
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mess とmagicは対で使われることがあります。
ある親が子供部屋を覗くと大暴れした後でとっちらかってる・・・そこで
No mess, magic!
と叫ぶわけです。マジナイ言葉みたいにです。
messは混乱とか紛糾とか、正にとっちらかった状態を表わします。そして、magicはその混乱振りを元通りにする力として使っていると思います。
つまり、ここは第1バース1行目を補完する内容で、
劇的変化(恐らく技術的な進歩や、科学的産業の敷衍だとか、それに伴う人間の思考や指向))が世界に与えている影響力について綴られているのではないかと。
しかしそれは、革新的に先行しているものの人間が置き去りになってはいないか?つまり out of hand は我々の手から主導権を奪った(機械化文明)ということを伝えようとしているのではないか・・・
out of hand は「〜手を離れる」「抑え切れない」「手に負えない」という意味の成句です。
第1バースのThe universe 「宇宙が」なのですが身近な私たちの世界を指しているに他ならないと思います。
自然科学の探求は当初、究明者の栄誉だけがそこにあったわけですが、近代化の中で自然科学が価値を持ち始めると諸々の産業に活かされるようになっていき、その目的は発展財なのか栄誉なのか鶏卵と化しているわけです。現代の錬金術とでもいいましょうか・・・
自然の仕組や公理が明かされていくことは征服でもあり、しかし自分の腹を切ることにも等しく、結果巻き起こった機械化はもう手に負えない域であるかのようであるとNeil師匠はその利用方法に疑問を投げかけている。
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合成周波数に踊る
高飛車な皮肉屋向けの
コンピュータ化された臨床講義
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上記の第3バースも謎めいているのですが、心を失った機械文明の愚かさを描いているのは明らかだと思います。
band を周波数としたのは、恐らくこの言葉も物理学から引いてきたプロットだろうと思うからです。量子力学を駆使して電子の状態を述すバンド理論というものがあります。それは波の数と量子の数で電子状態を示します(続く、第3楽章である Permanent Waves にも通じますが、量子力学の考え方はこのアルバムにおける重要なプロットでしょう・・・)。
科学的な結果(あるいは論拠)に沿うように形作られたものに踊る人々を揶揄しているように感じます。所詮、人造的な紛い物であるのに・・・と。
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In their own image
Their world is fashioned
No wonder they don't understand
彼らのイメージの中で彼らの世界というのは作られるのだから
彼らが理解しないことは不思議ではない
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公理(これだって人間が導き出した)偏重は公理から生じた産業偏重と混雑し人の価値観を歪めている。
そして現代の錬金術師にとっては「理解できなくても不思議ではない」。
・・・この「何を(理解できなくても)」が明示されていないところがとてもNeil師匠的であり、RUSH的であるわけです。
つづく
2005年06月30日
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