とてもドラマチックな曲でRUSHの表現力の凄さが満ち満ちています。
Power Windowsの中で秀逸に新しいRUSHらしさを開花させている作品だと思います。
パンチ、展開、叙情性、変拍子^^、キャッチーなリフ、重合と散開の妙・・・ここまではいつものRUSHらしさなのですが、そこにテクノロジーの取り込みとサビの強調が加わって詩の世界を鮮明に可視化するのであります。
イントロからフェイドアウトするまで「まるで自分が走っている」かのような気持ちになってしまう傑作です。マラソンしてしまいます、気持ちが。頑張らねば・・・!
(導入部分で早くも手足をグリグリしながらスタートラインで緊張気味に号砲を待つランナーの絵が浮かでしまうのは私だけでしょうか・・・)
Geddyのリフが始まると同時にレースはスタートするわけですが、このAパターンの1拍目にアクセントがある造り、ランナーが足を踏み出す(あるいは蹴り出す)雰囲気が出ててカッコいいのであります。
歌のラインがジャッキ(リフの頭からではなく直前の小節のおしりから始まる)で乗っているので、ベースリフのアクセントが後から追っかけてくるようで、ホント走っている感じがよく出ているのです。
そして、このパターンを澱み無く弾きながら歌ってしまうGeddy氏の卓越したアーティスト振りに言及しないわけにはいかない。
このインパクトのあるリフが3番から変化するわけですが、この辺の才能と全体を見据えた編曲力には脱帽します。
ラインが変化しているのもそうですが、1〜2番のリフはパターンが1小節で一塊なのですが3番からは2小節で一塊になっているんですね。
ペースは乱れていないのだけれども、ランナーの足が少し重くなってきたような、心の中の葛藤というか攻防が起きて(歌詞にも「走ることを止めて道端で休むことだってできる」と悪魔の囁きが出てきます。)、序盤の軽快な感じではないことを絶妙に描いていると感じます。
サビの大きくて安定した感じも好きなのですが、間奏の変拍子からAパターンの変形バージョン〜サビとつながるところが圧巻です。
(この変拍子パターンの挿入にRUSHの幅と力量を感じずにはいられません。不安げというか不安定な緊張感がランナーの心情と重なって迫ってくるからです。Alexの音をホールドさせてシンプルに重ねる「だけの」ソロも緊張感の高まりを見事に演出していますね。ソロ後、リフ奏者をベースからギターにスイッチしてテンションを保ったまま大きなノリに変化するあたりは、Tom Sawyerの間奏などにも見れるトリオならではの特筆すべき表現力なのであります)
A Show OF Hands のライブバージョンも強烈にお奨めであります。
2005年11月10日
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【受験生の方も読んでね】RUSH/Power Windows
Excerpt: RUSH/Power Windows このアルバムは、今のこの季節にぴったりだ。 楽曲だけでなく、音自体も『夏』である。(独断&偏見) だから今のこの季節に書くよ。 そして、中小企業診断士1..
Weblog: Bravado
Tracked: 2005-11-10 14:56



いとも簡単に(読み手としてはそう感じます)ベストの言葉で表現されるsnowdogさんのお力には、つくづく感動させられます。
「そうそう。それだよね。」
と思いながらいつも拝読させていただいています。
個人的には、この曲のおかげで(へんてこりんな)国家試験に合格できたという思いがあります。
各科目の間の小休憩の時間に、携帯プレイヤーでRUSHを聴いている姿が、
他の受験生を、ある意味で圧倒できたということも合格の秘訣です。。。
コメントありがとうございます。
楽曲が凄いんですよ、何ていうのか・・・コテコテでもなく人間臭くて(計算されてはいるのでしょうが、演奏する人、聴く人の余地があると言えばいいのでしょうか。曲自体を体感した時点で作品が出来上がるような作風。・・・ライブバージョンで本曲の人気が再燃したというのは理解に難くないです。)カッコいいという感じで・・・
(Geddy師匠が映画のサントラに興味があるというのも解るような気がします。)
私的にもRUSHの曲はエポックになっている作品が多いですね。詩の世界に拘ったことではないのですが
2002年〜3という年はDistant Early Warningに支配されていましたし^^、
遡れば20年も前、若造として揺れていた時、Freewill とHemispheresのThe Sphere はいつでも私を元気付けてくれました。
昨今読んでみたEmotion Detectorは一生携える作品だろうなぁ、とか
・・・等々。RUSHには感謝と敬意を