2007年07月13日

触れる袖

Neil師匠の描く詩の世界はとても秀逸で、その中でも切り取った絵が俯瞰図であったり、顕微鏡の中を覗くようであったり、
それでいて隣人の語りのようにその声が遠くはないことだと思う。

もうだいぶ前に、歌詞の解釈に没頭するきっかけになった曲があります。

The Camera Eye

ニューヨークとロンドンを比較しつつ、振興と伝統の互いが持つ長短を独特な三元論的見地で綴った詩であると解釈しました。
その中で、green と gray という2つの色が古えの時代では区別無く1つの言葉で表現されていたことを、古い価値観の比喩として使っているのだろうと推察しました。

実は限りなく深読み的ではありますが、このファンが多い「The Camera Eye」がプレイされなくなったことについて、この比喩の解釈が的を得ているとするなら頷ける私的見解をもったのです、当時。

緑と灰色とはあるタイプの色盲の方が区別できない色の組み合わせであることも知ったからです。

Neil師匠が歌詞中、その2つを「色」とは表現せずに「光の特性」と修辞したことはそのことについて意図的に婉曲させたのではないだろうと思っています。あくまでも古語の特徴を師匠的な言い換えで表現したのであって、そのことは後から知ったのではないか・・・。

(ゲール語族に遺伝的にそのタイプの人が多かったのかはわかりません。)

故に配慮から封印されたのではないかと・・・


なぜ今更、そんなことを思い出したかというと、Snakes&Arrows のライナーを読んでジャケットデザインとインドのボードゲーム「蛇と矢(梯子)」のつながりは全くの偶然的なものであったというNeil師匠のコメントに漠然とした私的共感を覚えたからです。

師匠の表現は印象派的言葉のパッチワークであって華麗で好奇心を誘う仕掛けられた構図を持った「絵画」だと私は思っています。
(最近の歌詞が、もっとストレートでありながらベールの色が濃くなっている印象を受けます。)

一見、関係の無さそうな事象や言葉に、別の言葉や言葉の背景を織り込んですれ違う相似を持たせたり、言葉同士を共鳴共振させたりするわけです。
修辞学的な代弁者としてだけでなく、自らの想念を妙味にするプロットとして。

極希に表に出てくる詩の背景やプロットへの師匠の言及を見ていると「飲み屋の壁の落書き」的な言葉の摩訶不思議なエネルギーと共感性に鋭敏なんだろうと思う。そしてそれが知的な構えをもっていることもあれば、馬鹿げたコミックでもあるところが好きです。super sensitive。

・・・
先日、Snakes&Arrows の感想として「ジプシー」というキーワードを使ったわけですが、
それは旋律やアンサンブルといった音楽的なこともそうなのですが、フレーバーという言葉を使ったように「雰囲気が」といっていいのかもしれません。

所在を持たない流動する民としてありながら、神秘的で独特な文化と芸術を持つジプシーと、S&Aで実現したRUSHの音楽になにがし、Neil師匠的近似性を感じずにはいられなかったのです。

・・・
先日、古本屋にいって叩き売りコーナーでジプシー本を買ったんです。
面白くてザクザクと読み進めました。

!!!


ジプシーの起源というのは未だに謎のベールに包まれていてよくわからないのですが、
先達の或る研究者は、ふとしたことをきっかけに歴史を辿るヒントを見つけます。

(ジプシーという名前も曖昧な誤解が根付いてしまった呼称で、「エジプトから来た人々」という意味のEgypsian の頭音が取れてできたわけです。ジプシーは自身をロムと呼びます。)

ジプシーはロマニー語という独自の言語を持っています(しかもそれは文字を持たない。英語の気安い友人を指す「pal」はロマニー語を英語表記したものだったりします。)。

ジプシー解明を進めていた中世ヨーロッパの研究者たちは、不思議な彼らの言語に惹かれつつも聞き覚えも文字もないそれに頭を悩ませていた・・・

何をしゃべっているのだろう彼らは?
そしていったい、彼らはどこからやってきたのか?と。

ある時、インドからの留学生同士の母国語による雑談を聞いていた僧は彼らの会話がジプシーたちのそれと似ているという直感を覚えます。

そのヒントから、語学的見地に立ったとき、ジプシーたちの言語はインド・アーリア系のサンスクリットを基盤にしていることが明らかになっていくのです。

ジプシーはその流動性ゆえに、行った先々の国の言語を吸収しながら地域ごとに新たななロマニー語を育てていきます。生活指向だけでなく言葉にすら自由を持っている民族だといえるわけです。



師匠が偶然いきついた「蛇と矢(梯子)」というインド独特の寓意がつまったボードゲームに後発的に出会ったことと、S&Aの作品群を聴いて感じたジプシーの香りがインドに行き着いたことが妙に(不思議とか、奇妙とかではなく)自然なことのように思えた。

(通じているとかいうことではなくて、その偶然的到達が共通していることが。)

「精霊の声を聴く感性さえあれば誰でも詩人になれる。」/ニーチェ
posted by snowdog at 07:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月22日

呼吸と鼓動と変拍子と

Snakes&Arrowsを聴きながら通勤してるわけですが、
最近のお気に入りパターンはHopeからのループかMal-Narからのループです。

Far Cry のインパクトがあまりにも強烈なので起き抜けの脳味噌にはこの感じが調度いい。

それでいて、これから書こうとすることは限りなくFar Cryの話。



まったく、楽しいことと不安というものは何故か隣近所にあるもので、そしてその意地悪さのバランスが私を魅了して止まないプロットであると言えます。(目的語はあえて省きましょう)

変拍子は私を奮い起こしてくれる大好き且つ不可欠なアプローチ(表現への)であって、技巧が先に在るものではないと信じて疑わない心があるものの、もちろん、楽奏的な挑戦や技巧的構築も否定できない(その手の楽曲が大好きでもあるから)。

ただ、何十年もRUSHに浸っていると曲の抑揚の必然として現れた変拍子の方が数段、私的に心地よい。


偏屈な四拍子否定論者の時代もあったのですが、ある著述を見たときに、その抗い難い律が厳然と存在することを知るに、変拍子解放戦線の拙者は心揺らいだのでした。

動物の(人間だけではない)呼吸と心拍の関係。
肺呼吸をする全ての生物は1呼吸する間に心臓が4回鼓動する。
つまり放っておいてもリズムを刻む2つの重要な体機能は4/4拍子になっているのです。

ハイハットをシャーシャーと二回打つと同時にドンパンドンパンとバスドラ・スネアを入れるようなもんです。

世の市場音楽が概ね四拍子なのは当然。
水の流れに任せるように、体内リズムと同期するようそこに用意されるからです。

しかし、Far Cry。

全体的にストレートな曲だと思うのですが(かなり自分は麻痺してると思う)、クセのあるイントロのアクセントパターンが実は4拍子(だと私的解釈してます)であることや、珍しくノリを壊す7/8フレーズが牽引リフで飛び出したりするのも好きですが、

ブリッジに展開する直前に配置された5拍子の小節がとても必然的な美しさと力強さを放っているようにしか思えないのです。

以前、民族音楽に言及しましたが、その感じです。
この小節を4/4拍子に歌詞調整することも、編曲することも可能なのでしょうが、そこは5拍子のインパクトを以てして曲を展開させることが流れの中で自然だと、RUSH MUSIC の判断があったように感じるのです。

思考と嗜好と志向が機械論的ではないということがRUSH音楽の素敵なところであると今更おもいます。

RUSHによって育まれた私の変拍子指向(数え方ではないという達観において)は、呼吸と鼓動のように死ぬまで続くのだろうと思う。
posted by snowdog at 00:16| Comment(5) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月19日

Different Fonts

ここまでのキャリアとアルバムごとに異なる色彩を放つ楽曲を省みて、
レタリングの「閃光のラッシュ」と「Vaportrails」以外は悉くロゴたるものはタガの如しと異なるフォントを使ってきたRUSHにとっては・・・
(記念碑的な閃光ロゴの位置づけには勿論賛同。Tシャツも持ってるし)

名は体を顕す、と言うよりもその名の形は態を表すと言うのが相応しいのかもしれない。まるで位格のよう、アルバムごとの「RUSH」という文字が、言葉が。

Snake & Arrows のそれも強いて言うとGUPのフォントと似ていて、やはり違う・・・
毎回、違えるというのは暗黙の意図なんだろうか?

それにしても今回のジャケット(中、裏含む)もCounterparts, Test For Echoes に勝るとも劣らない素晴らしい作品。芸術的で音楽とその世界を可視化させる素敵なPictures。
T4Eにアプローチは似ているけど、ドラマチックさではS&Aの方がアルバムの楽曲とリンクしているという点で上を行くと思う。

いきなりジャケットのメイン図案(S&A)とフォントのギャップにセンスの佳さを感じる。そして縦書きにも...

・・・
さて、本題^^;


連綿と続くデザインディレクターSyme氏とRUSHの見えざる連携というか関係に或る思いが沸々。

それはS&Aに付録されたニール師匠の書き出しと、FenderサイトのGeddyインタビュー記事に共通する見識がそうさせるのかもしれない。前者は純粋なNeil師匠の心情であって、後者はRUSHをよく知るだろう記者の憧憬にも似た演奏者・合奏者たるRUSHへの気の利いた賛辞である。

Neil師匠は言う
「僕は彼ら(Dirk&Lerxst)のファンなんだ。」と。

そして記事、
Thirty years of touring is a long time, to be sure, but Rush's vitality and longevity is no big mystery, these guys still love music with zeal of a teenage fan, And, may be more importantly, they still really like each other.


(信頼という言葉には(言葉遊びになりますが)ホンの数パーセントの力がかかっているように思う。する方もされる方も・・・真逆の不信という言葉に力が隠っているように。)

記者が信頼よりももっと高速で純粋な潤滑因子「好意」という言葉を使っている意味が何となく解る。


記事の着眼は---シンプルであるけれど30年ものあいだ良質な音楽を創出し続けるRUSHの凄さは、とても純粋に彼らの音楽的好感の交歓が互いにあるからだというそれは---Neil師匠の発言によって図らずも裏付けられた。
(RIRのドキュメンタリー部など見れば明白なのですがね・・・)

ライナーを読んだ際、反射的にこの記事のことを思い出したことがとても嬉しい。

Syme氏とRUSHの間にも似たような交歓があるような気がする。互いにファンなんだろうな、と。
(書きたかったことは、たったこの一文なんですが)
posted by snowdog at 22:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月13日

偶発的RUSHな飲み会

金曜日に友人と馬酔木に行った。

過日、Snakes & Arrowsを封切った5月2日の飲み屋さんです。
店のBGMとしてかけてもらったのですが、ハードロック好きなマスターは速攻でS&Aを購入、合わせて Different Stages を追い買いしたそうで^^

そんなこととはつゆ知らず、突然、硬質な Analog Kid がかかったので、会話を遮って「おー!」と叫ぶ。

そしたら前述の説明を受けて、ハハハ。

そしたら、別のお客さんからも「RUSHですねー」。
マスターが「5年ぶりでしたっけ?新譜、Snowdogさん」と振ってくれたのでRUSHトライアングルを形成して談義突入。

お客さんはSnakes & Arrows 発売を知らなかったので、思いっきり勧めておいた。
(Counterpartsで切れていたそうです、購入。思いっきり入りやすいだろうし、気に入ってくれることでしょう・・・)

最後に来日が取り沙汰されてるみたいだけど、来てくれるといいですね、と締めくくったら終電だった。

実現したら店休業ですね、マスター。
posted by snowdog at 19:43| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月11日

DSです

居酒屋で自然科学聴いてます。いい週末です。
posted by snowdog at 23:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月09日

and i love winter



師匠・・・ぐーふぃ
でも、おもろい^^

なんだろ、これ?
posted by snowdog at 22:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 情報・ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月08日

蛇と梯子

img236.jpgまったくの偶然で今夜、インドバーに来てます。
思い立ってバーテンさん(ちなみにこの方プロの打楽器奏者。チャンドラさんです。タブラというインドの打楽器)

Snakes & Arrows のジャケットを見せて
「知ってる?」と聞いてみた。

デザインが施されるから首を傾げる、チャンドラさん。

「インドのボードゲームらしいよ。」とヒントを出すと

「ああ、蛇と梯子!」
(ニール師匠のライナーにもあったな)

とても楽しいゲームだよ、とゲームの説明をされてインド人の皆さんに囲まれました^^

RUSHはご存知なかったですが・・・^^;
posted by snowdog at 22:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Snakes & Arrows の私的キーワード

ふと思い返してみると、このブログを書き始めて初めての新譜なんだと思うと、突然に仏教的二元論な感慨に見まわれました。

(FEEDBACKは別格として。僭越ですが、何だかとても自分事のような錯覚とでもいいますか、そんな感情が涌いてます・・・新譜を心待ちにした方々も同様かもしれない。簡単にいうと個人的に興奮してるだけか・・・^^;)

レビューを投稿しようと思って思いつくままにキーワードを列挙してみた(単純に音楽的にです。詩の世界は捨象です)んです・・・

重い×
分厚い△
暗い×
洗練◎
豪奢△
ユニーク○
難解▲
爽快?
ヘヴィ○
優しい▲
楽しい▲
ヘンテコ☆
気持ちいい○
ストレート△
壮絶○
変☆
独創○
挑戦☆


・・・で、考えることに飽きてきた頃に、ふっと湧いたんですね。

コロンとサイコロ振ったら7の目が出たみたいに驚いた、自分で。




情熱的です、Snakes & Arrows 。
posted by snowdog at 21:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Armor And Sword

Far Cry が余りにも強烈なので2曲目から聴くようにしてみた・・・。

しかし、アルバムタイトルを牽引するだけあってArmor And Sword も強烈。

ライブでは是非!据え置きアコースティックギター使って再現してほしいな・・・導入Aメロ。ギターとベースのユニゾンアルペジオがもの凄くカッコいい!
そしてそのままGeddyの歌が乗っちゃうRUSHアンサンブル最高!


メロディとギターがいいですね。どの曲も・・・

この曲を聴いているとUKロックの色合いが濃い気がする(ウェットン、ホールズワースのUKじゃなくて)。
ヨーロッパ全体のロックには疎いけど何かそんな気がする。

ギターのオーバーダブが強烈なせいだろうけど、湿り気といい、バランスといいSlang時代のLepsのアプローチを彷彿させる。
(そう言えば、偶然にもジャケットに仏様がいたな・・・)

軟質な金物について過日書きましたけど、イントロに使われるスウィッシュシンバルのカラーもいつもと違っていい感じです。バスドラの「ストロド(擬音です)」と絡まって小節を力強く牽引して・・・
posted by snowdog at 13:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月06日

単なる修辞学的ではないモノノケ

ただ流して聴いていて
とりとめもなく浮かんだ音楽がありまして
関連が在るとか無いとかではなくて、
忘れないうちに書き留めておきます

Hydra/TOTO
The Red Shoes/Kate Bush
Bump Ahead/Mr.Big
Live Killers/Queen

5.Spindrift〜8.Hope までの塊がかなり不思議で・・・

ふと、思ったのはライブアルバムみたいだな、と、
選曲というか曲順が・・・

KENSOの「天鳶絨症綺譚」というアルバムに味が似てる気もするし・・・
(ロック魂という意味での共通点には太鼓判)



・・・
(全くの余談というか、私的クロストークです。駄文)
The Way the Wind Blows・・・
謎で不思議な曲です。
ブルージーなギターの牽引メロディももちろんなんですが、
へヴィーなリフのAメロは良しとして、
ブリッジからサビ(?)がですね、間違いなく鍵盤で創られたコードワークとメロディだと思うんです(思えるんです)・・・
間奏のギターフレーズといい、コーラスといい・・・

この感じ・・・(Queenの)Brain May作曲に聞こえる誤爆右脳をお許しください。
(私的には在り得ない純粋な感動としてそこにあることを追記しておきます)
posted by snowdog at 22:04| Comment(0) | TrackBack(0) | Snakes&Arrows | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする