まずインストの楽曲が3曲だったことをお詫びします。
そしてこの3曲の楽曲がどれも素晴らしいということを書き添えなければなりません。
(HOPE、いいな。Lerxst Lifesonいいぞ!)
FAR CRY を聴いて感じたことはアルバム全体に楚々としかし力強く流れていた。
地下水脈のように目に見えず清らかで、しかし超純水とは違うミネラル豊富な流れ。
ジャンルが不明な(RUSHとしかいいようのないその彩色)彼らの音楽がここまで精神性を顕にした作品。
演奏力と編曲力へ注がれた精神性はアルバムジャケットとも相まって当然(決して結果的ではない)として傑作に出来上がっている。
「完成度が高い」という言葉が乾いて見えるほどのこの新鮮な重合(安直な表現ならチームワーク)は、
3人の枯渇しない芸術性とユーモアの賜物であり、
RUSHが時間に左右されないことをまたも証明してしまった・・・。
3人による各楽曲のRUSH化は、「FEEDBACK」を接点として「閃光のRUSH」から「Vaportrails」が1つの大きな輪に成ったように思え、本作「SNAKES&ARROWS」はその輪の上をクルクルと回っているように私には映る。Sphereである原子上を円運動する電子。
RUSHが歴史として放ってきた変化・進化というエネルギーは、方向性になど囚われていなかったことを思い知らされた。
(一ファンなぞには分からない方針なるものがあるように勝手に思いこんでいただけで、作品群が一直線上にあるという思いこそが浅薄だったと・・・)
・・・
メロディラインの持つ安息感は初期のアルバム(「夜間飛行」「鋼の抱擁」「2112」「フェウェル・トゥ・キングス」)に含まれる小曲の香りを持っているし、もっと昔の(ニールが言うところの60年代の)香りも確かに持っている。
それがカラーではなく香りであるところが本作の特徴的な結実であると思う。手法としてではなく精神的動機によって織りなされているということが・・・
感想を印象派的に修辞しているのでとりとめもない。
Geddyが言うように本作を説明するのは難しい。
友人の言葉を思い出す。RUSHの曲をプレイしようとするときの演奏者側としての発言。
「最近のアルバム(Presto以降の話し)の曲は以前のものに比べて難しいよ。」
尊敬するベーシストである彼の発言は、どんなにこけてもYYZをプレイすればRUSHのカバーをやっているのは伝わるけど、
最近の曲を再現するためにはRUSHのグルーブ(キャリアや精神性だと思う)が不可欠で俄かコピーでは太刀打ちできないことに言及したのだった。
本作はそれの究極であるとともに、その逆な部分も持ち合わせた不思議なアルバムであるように思える。
キーワードである「Spiritual」が前面に出ているから、曲に牽引されるプレイができるような気がしなくもない。
演奏をしようとすればするほど精神性を感じられるような気がする。
spiritualize us
あり得ない予測も当たらずとも遠からずだった。
傑作というよりも名作がふさわしい。
このアルバム、爆発的なセールスを記録しそうな予感・・・
(実際、今見てみるとamazon.comのBestsellersで2位に位置してる!)
ジャンルなどどうでもいいことだけど、RUSHをプログレと呼ぶことに否定的なプログレファンにとっても
好印象な作品だと思うし、郷愁漂うメロディは幅広いロックリスナーに受け入れられると確信せざるを得ない。
そして多くのRUSHファンがKOされること必至。